仮想通貨の売買や使用により利益が出たならば、たいていの場合には確定申告をする必要があります。その際の計算で、実は仮想通貨の購入価額は2種類の方法のどちらかを選べるようになっています。
今回は確定申告において、仮想通貨の購入価額のふたつの計算方法について詳しく説明します。
仮想通貨で利益が出たら確定申告を
仮想通貨の売買などで利益が出たら、確定申告をしなければなりません。まずはその概要を説明します。
ほかの雑所得と合算して20万円を超えたら申告を
仮想通貨の売買などで得た利益は「雑所得」として申告します。雑所得は給与所得などと合算するので、会社員の方は天引きされた税金に加えて追加の税金が生じることになります。
雑所得にもいろいろありますが、そのトータル金額が20万円を超えたら、確定申告が必要です。20万円以下なら不要となります。
ただしこれは所得税の話なので、雑所得がいくらであっても住民税の申告はしなければなりません。
利益の計算には「取得価額」の算出が必要
たとえば仮想通貨の売買において、売却価格の単価が購入価額の単価よりも高ければ利益(所得金額)となります。ちなみに逆であれば損失となりますが、この損失は給与所得などと合算することはできないので注意しましょう。
仮想通貨の売買では複数に分けて購入や売却をするケースがあると思います。この場合、売却単価に対して購入単価はいくらになるのか、という問題が発生します。たとえば次のケースです。
10月1日 1BT(ビットコイン)114万円で1BT購入
10月11日 1BT120万円で2BT購入
10月12日 1BT123万円で2BTを売却
10月17日 1BT120万円で2BT購入
10月21日 1BT130万円で1BT購入
10月27日 1BT140万円で2BTを売却
さて、10月12日の売却で得た利益はいくらになるのでしょうか。これは、いくらで購入したのかによりますが、その購入価額の計算方法は2種類あります。単純に10月1日か10月11日のどちらで購入したのかを選ぶわけではないということです。
仮想通貨の取得価額はふたつの計算方法がある
仮想通貨の取得価額を計算する方法はふたつ、「移動平均法」と「総平均法」があります。
移動平均法の計算方法
移動平均法の特徴は、仮想通貨を取得するたびに購入単価を計算することです。そして売却した場合、その購入単価をもとに損益を算出します。
前出の売買例をもとに計算してみましょう。
10月1日と10月11日で合計3BTを購入しています。そして購入代金は総額で114+(120×2)=354(万円)です。この平均単価は、354÷3=118(万円)となります。
そして10月12日に2BTを合計246(123×2)万円で売却しました。この場合の売却益(所得金額)は次のとおりです。
(123-118)×2=10(万円)
この時点で単価118万円で購入した1BTが残っています。次に10月17日と10月21日で合計3BTを総額(120×2+130)=370(万円)で購入しました。すると、合計4BTが手元に残り、その購入単価は次のようになります。
(118+370)÷4=122(万円)
最後に10月27日に140万円の単価で2BTを売却したので、この際の所得金額は、
(140-122)×2=36(万円)
となります。そして手元には122万円の単価で購入した2BTが残っています。
総平均法の計算方法
総平均法は購入単価を対象期間のすべての取り引きから算出します。上記の例では次のとおりです。
(114+240+240+130)÷6=120.67(万円)
そして10月12日と10月27日それぞれの売却による所得金額は次のようになります。
(123-120.67)×2=4.66(万円)
(140-120.67)×2=38.66(万円)
どちらを選ぶほうが得か?
移動平均法と総平均法それぞれにおける所得金額が違うことに注目しましょう。移動平均法は合計で46万円、総平均法は合計43.32万円です。わずかですが後者のほうが所得金額が少ないので、税金も少し安くなります。
ただし残っている2BTの購入平均単価は前者が122万円であることに対して、後者は120.67万円と少し安くなっています。つまり次の売却における所得金額は後者のほうが高くなるということです。
これは相場の動きや売買履歴によっても異なるため、一概にはどちらが得なのかはわかりません。ただ、所得税は所得金額によって税率が増えていく累進課税になっています。もともとの給与所得がどの程度かによっても、税率が変わらない程度の雑所得となれば負担はさほど増えないと考えられます。
所得金額の増減幅をなるべく少なくし、税率が変わるのを回避するのであれば、直近の価格に近い移動平均法のほうが多少は有利になると考えられます。
まとめ
どちらの計算方法を選ぶかによって仮想通貨売買による所得金額が変わることがわかります。ただし一度選んだ計算方法は3年間は変えることができないので注意しましょう。また移動平均法を選ぶ場合には、確定申告期限までにその旨を申告する必要があります。申告しなければ自動的に総平均法が適用されます。その点も留意しておきましょう。